馬が死ぬということ

先週金曜日夕方

滋賀県栗東(りっとう)にあるJRA栗東トレーニングセンターで火災が発生し、サラブレッド5頭が命を落としました。

ネットニュースでも報じられたので、ふだん競馬に詳しくない人も目にしたこの件。

原因は不明、そして各紙の続報を読むと

「防犯カメラには人の出入りは一切確認できず」事件性は否定されているようです。

馬は臆病で火を見ると逃げることもできずその場で動けなくなってしまう、というのは何度か聞いた話。となるとこの火災が発生したとき、ヒトが彼らの住まい"馬房"から救い出さねばなりませんでした。

たいていの場合、馬房にいる馬はリラックスして過ごさせるため、人が乗るのに必要な馬具などは外してある。いわゆる真っ裸な状態です。

そして普段は簡単に逃げ出さないよう、大きな引き戸があり、その部分に、ヒトの胸の高さあたりで金属製の棒を2本ほど渡しているところもあります。

馬がもし、自分から避難しようとしても構造上できない。では早くに人が駆けつけたとして、馬を救うにはどうするか。

引き戸を開ける、棒を外す。そして馬を引っ張り出す。

しかしヒトより断然大きな動物です。前から引いても後ろから押しても容易には動きません。

競馬場で馬をリードしながら歩く人はヒモのようなものを持ちますよね。ああいった道具は馬をコントロールするのに役立ちます。基本的に何らかの道具を装着しないとヒトは馬を操れない。それを取り付けて引っ張って…避難に一頭あたりどれだけの時間がかかるでしょう。

もうひとつ、ヒトの働き方の変化にも触れるべきではないかと。冒頭に書いた、出入りがなかったということについてです。

昔は厩舎の建物の端はヒトの住むスペースで、調教師さん一家だったり、若手の騎手が文字通り住み込みで滞在していたものです。しかしサラブレッド相手の仕事は夜明け前からスタート、調教あとのケアやカイバ(エサ)を与えるなど、一日じゅう馬のそばにいてもやることはある。しかし作業=労働時間にメリハリをつけることの重要性も近年では認知されて、いまやトレセン内に住むヒトはほとんどいず、近隣の自宅に戻っては必要に応じてトレセンに来るの繰り返し。それは馬にもいいとされています。だって始終ヒトの目線や動きが気になっていては馬房でくつろぐ意味もなくなってしまいますから。

推測ですが、もう少しすれば夕方のカイバを与えるためにスタッフが来るところだったのでは?その人手により救えた馬がもっといたのでは?もちろん各厩舎には火災報知器もあって、素早く感知はされていたはずですから、ここでは純然たるマンパワーということです。

あの日は北海道や九州の競馬場に滞在している馬もいたため、厩舎は満杯でなかったでしょう。もしそうだったら犠牲はさらに増えていました。

さまざまな不運も重なってみえる今回の火災。馬主さんはじめ調教師さんやスタッフのみなさんはショックを受けたに違いありません。

二度と起きないでと願うばかりです。