「えい!やっ!!ふう!!!」
深夜のアナウンス室。
会議室から甲高い声が漏れ響いてくる。
榎並 「な、なんだ…?」
榎並が恐る恐る会議室のドアを開けると…
平井 「はっ!せいっ!!」

そこには柔道着姿の平井が。
榎並 「ひ、平井さん!?何やってるんですか!?」
平井 「きゃあっ!榎並〜!」

妙に嬉しそうな様子の平井。
榎並 「あの…隠し芸でもやるんですか?」
平井 「もう!この格好みたら分かるでしょ?もうすぐ大事な試合があるの!」
榎並 「あ、もしかして来週の柔道ですか?」
平井 「そう!12・13日の全日本選抜柔道体重別選手権!
ロンドン五輪代表が決定する大切な試合なんだから!」

榎並 「でも…だからってなんで、平井さんが柔道の練習を?」
平井 「番組キャスターとして、もっと柔道に対する理解を深めたいと思って…」
榎並 「…平井さんは本当に勉強熱心ですね。」
平井 「そんなことないんだけど、出来る限りのことを、尽くしておきたいんだ。」
平井の額をひとすじの汗がつたう。
榎並 「(それにしても…今日の平井さん、何か変だなぁ…)」
どこか落ち着かない様子の平井。
何か決意したように、ふうっと大きく息をつき、口を開いた。
平井「ねえ、ちょっと…いい…?」

榎並 「なんですか?」
平井 「突然の話で、驚かせちゃったらごめんね…」
榎並 「(…?)」
平井 「榎並って…本当に素敵だよね。」
榎並 「(へ?)」
平井 「優しいし気が利くし、間抜けなようで実は頼れるし…」
榎並 「(な、なんだなんだ!?)」
平井 「榎並みたいな人、探してたんだよね。」
榎並 「(ちょ…この流れ…まさか!?)」
動揺する榎並。見つめる平井。
平井 「こんな私だけど…榎並さえ、よかったら…さ…」
平井 「付き合って…くれないかな?」

榎並「(えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?)」
つづく