先日、日本武道館でAKBメンバーらによるじゃんけん大会が開催された。

たかがじゃんけん、と侮ることなかれ。
この大会で勝ち残った16人にはAKB48第24弾シングルの選抜メンバーの座が、
そして優勝者にはセンターポジションという、大変な称号が与えられるのである。
総勢68人のアイドル達による熱き戦い―
その歴史的瞬間に立ち会おうと、大変な倍率をくぐり抜けた猛者たちが
チケットを握りしめ日本武道館に詰めかけていた。

群衆の流れに押されるまま私も館内へとなだれ込み、いよいよ大会が幕を開けた。
観戦しているうちに、私は呼吸することすら忘れてしまっていた。
アイドルたちの華奢な拳から繰り出される
ダイヤモンドを打ち砕く鋼鉄のグー。
時空を切り裂く鋭いチョキ。
そして、光をも飲み込まんとするパー。
そこでは、じゃんけんという名の格闘技が繰り広げられていた。
頂点に立った篠田麻里子さんは試合後のインタビューで
「気づいたら優勝していた」と語っていた。
まさに無心で勝ち取った勝利だった。
大会終了後、レフェリーを務めた南海キャンディーズの山里亮太さんは次のように話してくれた。
「総選挙とじゃんけん大会。ともに選抜メンバーを決めるイベントですが、
ファンの投票でメンバーが決まる総選挙は、たとえるなら『ゴール』。
それに対して、このじゃんけん大会は『スタート』なんですよ。
今日選ばれた16人の、第24弾シングルに向けての、新しいAKBとしてのスタート。
出発点なんです。」
それからしばらく、この「スタート」という言葉が、頭の中をグルグル廻っていた。
現実離れした光景を目の当たりにした今日という日が、
私にとっても何かのスタートになるような気がした。
そんなことを考えながら駅へと歩いていると、
女性が駆け寄ってきた。
「あの、ファンです!!」
初めての経験だった。白のワンピースを着た、綺麗な人だった。
ドキドキした。嬉しかった。何かのスタートを感じた。
その直後、「田中大貴さんですよね?」と言われた。
じゃんけんも本人確認も、『後出し』はルール違反だと思った。