
そのせいで、憧れのポニーテールも、帽子も似合わない。
小さい頃は、それがイヤでイヤで、
「生まれたばかりの時に、変な寝かせ方をしたんでしょ〜?!」
と、母に何度もクレームを言っていた。
しかし、ある年のお正月。
祖父の隣に座った私は、祖父を真横から眺め、母のせいではないと納得した。
そういえば、
たれ目なのも、目が茶色いのも、背が高いのだって・・・
私は、祖父に似ているのだ。
先週、その祖父が他界した。
今年、数えで92。大往生って言うのだろうか。
最後となった今年のお正月。
例年通り、お祝いの中華料理を、皆と同じように食べた。
多少、歳を取ったと感じさせられはしたけれど、本当に元気にしていた。
年明け間もなくで逝ってしまった祖母の3回忌も、自分で全て手配して、無事に済ませた。
よく喋る祖母がいなくなり、90にして一人暮らしを始めて以来、一度だって、
孫の私はおろか、母に対しても、「寂しい」とか、「もっと連絡をくれ」とか、
愚痴らしい言葉が出ることはなかった。
美味しいミカンやお肉・お小遣いなど、最後の最後まで、私達に送ってくれた。
亡くなった後、
私達に次回、お肉を送る為の“送り状”が、出てきたらしい。
几帳面な祖父のこと、丁寧に書かれた宛名が目に浮かぶ。
こちらは、してもらうばかりだったのに。。
「孫が立派に育ってくれて、ありがたい。みなに感謝せな。」
いつも、そう言っていたらしい。
口数は少ないけれど、色んな事を教わった。
妹が話していた。
「孫娘の結婚相手に求めるものは、
嘘をつかない人・人の悪口を言わない人・自分の事よりも相手のことを想える人。
この3つって、おじいちゃんそのものだね。」
「(よく喋る)おばあちゃんよりも、おじいちゃんが長生きしてくれたから、
この3年で、おじいちゃんと色んな話が出来たね(笑)
おばあちゃんに話を遮られて、結局話すこと忘れちゃって、
おじいちゃん、怒っていたのに、最後は笑っちゃってさぁ〜」
「おじいちゃんが午年(男)、おばあちゃんが寅年(女)だから、
私(午年・女)と結婚相手(寅年・男)と、ちょうど逆だねって言ったら、
おばあちゃんの目の前で、『その方がえぇ〜』って真顔で言うんだもん。
その後、自分が言ったことなのに、皆が笑うから、
おじいちゃんも泣きながら笑っていたよね〜(笑)」
寂しくて仕方がないけれど、思い出話に笑うことが出来た。
親戚が集まって、興奮気味の怪獣。
パパやチーちゃんとトランプをしたり、姪っ子と走り回ったり。。
無邪気な姿に救われた。
でも、そんな怪獣が、
お葬式も最後になって、いきなり、
「おじいちゃんに、あいたいぃ〜、しゃみしぃ〜」と、絞り出すような声で泣き始めた。
私が思うよりも、色んなことが分かっていたんだね。
「なんで、おじいちゃん、しんじゃったの?」
「なんで〜、てんごくへいくの?」
「おばあちゃんに、あいにいくの?」
同じ質問に、何度も何度も答えた。
「天国で、おじいちゃんも、おばあちゃんも、笑っているよ。」
と、怪獣に言った。
私も、そう信じているから。
怪獣の頭も、鉢が張っていて、絶壁。
後姿は、おじいちゃん、そのものだ。
私にとって、おじいちゃんの存在自体が故郷だった。
おじいちゃん、本当にありがとうね。