「優しさの意味・3」

病院の入院塔には、感染症予防のため15歳以下は入室出来ない。だから患者に兄弟がいる場合、兄弟は入院塔と扉一枚を隔てたロビーで待っているしかない。

ポコの入院中、いつもロビーで1人で待っている子がいた。怪獣と同い年のおとなしい女の子だった。
私はその子と、ロビーで休憩する度に顔を合わせるようになり(飲食もロビーまで出なくてはならなかったため)、徐々に仲良くなった。

ある晩、ポコが寝付かずに気付けば21時半。夕飯を食べていなかった私がふぅ〜とため息をつきながらロビーに出ていくと、その子がまだ1人で遊んでいた。私は、思わず横に座って話をした。

何をして遊んでいたのかなど話をしていると、その子の視線が、私が持っていた蒸しパンにある事に気付いた。
「まだご飯を食べていないの?」
私が聞くと、頷くその子。とはいえ、勝手に食べ物をあげるわけにはいかない。
とっさに私は「待っててね、ママに聞いてからあげるからね。」と言って病室に戻った。そうすることが良いと思っていた。

薄暗がりで私に話し掛けられたお母さんは、びっくりした表情をした後、穏やかにこう言った。
「もうすぐ帰ってご飯にするので、大丈夫です。すみません。」

私は、自分の想像力のなさが情けなかった。私でもきっと「大丈夫です。」そう言う。疲れていたとは言え、相手の立場に立てず、自分の優しさを押し付けた感じがした。

その後、女の子とロビーにいた私の所へ、お母さんは走って出てきた。
「保育園から病院に来る間に食べさせても、もたないのは無理ないですよね。まだ4歳。我慢させ過ぎていると思います。」
お母さんはその後も、私に下の坊やの病状など、淡々と話してくれた。

「下の子は可哀相です。でも上の子も・・・だからといって甘やかすと、家に帰ってからが大変なんですけどね〜(笑)」

常に親に甘えられる状況にはないかもしれない。いつも決まった時間にご飯は食べられないかもしれない。でも、私は普段、これ程、怪獣を想っているだろうか。
自転車で帰る2人を見送った後、色んな事を考えた。