
週明けの大荷物を抱えた私をよそに、2人は坂道をダッシュで下っていった。
車通りが少ないとはいえ、度々私の大声(怒鳴り声?)が響く。
「車がきたよーっ!」
「ちょっと、待ちなさーいっ!!」
その度に、ゲラゲラと2人の笑い声が返ってきた。
私にとって父のような、子供達が「ぐらんぱ」と呼ぶ大切な人とのお別れは、
まるでフワフワと夢の中を漂っているようで、今でも信じられずにいる。
長い間、病気と付き合いながらも、常に前向きな人だった。
昨年入院をした時、水も控えなくてはならない状況にあって、
「エビフライが食べたい」
と言って、周りを笑わせた。
宣言通り、みるみる元気になって、フライもお寿司も食べた。
家に行けば、86歳とは思えないくらい、ハリのある大きな声でいつも迎えてくれた。
私が20で出会って、もう14年。たくさん愛情をくれた。
私の結婚が決まった時には、父以上に“嫌な顔”をしてくれた。
子供達、特に怪獣には、色んな言葉を残してくれた。
中には、厳しい言葉もあった。
「なんで、天国に行かなきゃならないの?」
最期のお別れの時、それまで平気な顔をしていた怪獣が、声をあげて泣いた。
6歳なりに、別れを受け止めようとしていた。
4月から怪獣は、坂の向こうの小学校に通う。
さぁ、深呼吸して、
元気をだそう。