以下、私信。

会社を去る、あなたへ

初めて一緒に仕事をしたのはいつだったか

まじめなお嬢さんという感じがするばかり
だから、だった

「…そんなに一生懸命やらなくてもいいんじゃない?」

こんなことを言ったことがある

場所は北海道
夕方のニュースを終えて
飛行機でやってきた

僕は先に着いていて
牧場のスタッフと飲み会

そんななか
今空港に着きました、と連絡が来て

雪の残る千歳の町
気温も氷点下だったんじゃなかろうか
それでもスタッフたちは
あなたに早く会いたい一心で店を飛び出し
タクシーが店の前に止まるのをひたすら待っていた

もちろん僕も待った

翌日あなたは初めて
生まれたてのサラブレッドと対面
名馬の母親からデビュー前の仔馬から

僕がへっぴり腰でも
騎手のようなモンキー乗りで
800メートルを駆け上がったのまで目撃

すごいスピードだったが

あなたの前で落馬だけは避けねば
そして
できればカッコよく
できるだけカッコよく
と考えて目の前を走った

そして午後
慌ただしく東京へ戻って行った

牧場までの
空港までの道すがら
とりとめのない話の連続のようで

あなたの志向を傷つけた言葉だっただろう

それでも
空港から再び牧場へ戻っていく僕の車を
しばらく見送る姿が、ミラーに映った


競馬番組とか
ずいぶん並んで座ったけど

あの北海道のことが
一番思い出される

今考えても
強行スケジュール
よく来たもんだ



その後
一緒に店の前で待っていた
牧場マネージャーが急逝

広大な牧場をどう案内するか
いろいろ考えてくれたスタッフも
今は別の職場へ

僕は、といえば
もう一度
あの速さで馬を走らせたいと思うものの

なかなか勇気がなく
そして確実に年を取り

二度とできないんじゃないか、と
考えなくもない

そんな中
あなたは凛とした表情で
ニュースを読み続けていた

ツバサドリーム
ツバサ
どちらの馬も
あなたが競馬番組担当時にデビューした

もっとも2頭ともオス馬ではあったが

馬券を買い
応援する表情

あのときブログがあったなら
きっと載せていただろう


そうそう
お好み焼きをほとんど食したことがない
僕のために
講習会、を開いてくれたこともあった

でも今
お好み焼き屋に行っても
上手に焼く自信がない

ちゃんと手元を
見ていなかったんだな、きっと



そんな記憶を僕に残しながら
長野翼さん

ごめんなさい ありがとう 
ごちそうさま お元気で

そして、お幸せに